)

遺伝子検査の功罪 (米国FDAは検査禁止へ)

ネット検索で「遺伝子検査」を調べますと、数多くの有名企業も含めて民間業者が参入していることがわかります。一方、米国FDAが民間企業による遺伝子検査を規制していることをご存知の方は少ないと思います。

参考: Statement from FDA Commissioner Scott Gottlieb, M.D., on implementation of agency's streamlined development and review pathway for consumer tests that evaluate genetic health risks  2017年11月6日

https://www.fda.gov/newsevents/newsroom/pressannouncements/ucm583885.htm

遺伝子を調べれば何でも判明する!   という安易なブームが広がっていますが、この傾向に警鐘を鳴らしている方々も大勢いるわけですが、「悪貨は良貨を駆逐する」の言葉どうり、この日本では、いつもながらに、誰かがこの検査を実施したことで大きな事故が発生するようなことがない限り、つまり誰かが犠牲にならない限り、遺伝子検査ビジネスは拡大を続けていくことになるのでしょう。

何が問題なのかについては、例えば下記サイトを参照ください。

「「遺伝子検査」実は占い並み!?過熱ビジネスに注意せよ」(北里大学大学院・臨床遺伝医学講座教授 高田史男医師)   ダイヤモンドon line , 2016年7月27日 より引用

https://diamond.jp/articles/-/96777

.......DeNAやYahoo!、DHCなど、あまたの有名企業が新たなビジネスチャンスとして参入をはじめた"遺伝子検査"。病院など医療機関を通さないことから「DTC(Direct-To-Consumer)遺伝学的検査」と呼ばれる。しかし、「最先端科学の粋」を謳うこのビジネスが、医療における遺伝学的検査とは異なり、実はこじつけに過ぎないような"占いまがい"のものだと知れば、驚く方も多いのではないだろうか。過熱する"遺伝子検査"ビジネスの内情をレポート.........

・『医療としての遺伝学的検査』が、民間のDTC"遺伝子検査"と混同されている。アンジェリーナ・ジョリーさんの場合、「BRCA1」という単一の遺伝子の影響によって、将来の乳がんや卵巣がんの発症リスクが極めて高いことが判明したため、本人の強い希望で予防的切除術に踏み切った。しかし、DTC"遺伝子検査"が扱うのは、単一遺伝子に因らない通常のがんや高血圧・糖尿病・肥満など。これらの疾患は、膨大な数の遺伝子一つひとつによる、わずかずつの関与に加え、さまざまな生活習慣が複雑に絡み合う「多因子疾患」である。

「極端な例で言えば、ある企業の検査における『音楽の才能』の項目ですが、これは、医療の世界では『難聴』の際に解析する遺伝子の変異を調べています。難聴に関係する遺伝子は既知のものだけでも70ほどありますが、このうちのたった1個の遺伝子を取り上げ、しかもその中のたった1ヵ所の1個のDNAが正常であることを根拠に『耳が良く聞こえる』=『音楽の才能がある』と断ずるのです。難聴に関連する遺伝子の変化に対する判定には、『正常』か『異常』、すなわち普通の聞こえである『健聴』か『難聴』しかなく、『正常よりも優れた聴力』などといった判定は存在しません。われわれから見ればあまりにも荒唐無稽ですが、このようなことが大手を振ってまかり通っている現実があります」

14年にネイチャージェネティックスで発表された論文によれば、成人の身長に関する遺伝情報のバリエーションは、現在約700個ほどが報告されているという。

 しかし、DTC遺伝学的検査を行っているある企業の「体質」の項目のうち、「身長」の根拠として"検査"しているゲノム変異はたったの1個である。700分の1の手がかりを取り上げ、あたかも確定的な事実のように喧伝するのはあまりにも早計であろうし、これこそが、検査する企業によって結果がまちまちである原因だ。企業によって、選ぶ情報も、根拠とする論文も違うのである。

いち早くDTC"遺伝子検査"キットの販売を始めていた米国では13年、FDA(食品医薬品局)の命令により、祖先検査など医療上問題とならない検査を除いて、ほぼすべてのDTC遺伝学的検査に関するサービスの販売が禁止された。15年、最大手の23アンドミー社がブルーム症候群の検査に限り認可を受けたものの、依然としてサービスの禁止措置は続いている。「現在、ほぼ規制がないままDTC遺伝学的検査が販売されている国は、先進国ではカナダ、英国、そして日本の3ヵ国くらいです。規制している各国が根拠としている概念に、米国CDC(疾病管理センター)が提唱するACCEモデルがあります。これは『分析的妥当性』・『臨床的妥当性』・『臨床的有用性』・『倫理的法的社会的影響』の英語の頭文字から作られた略語です」

☞以下は「市民のための遺伝子問題入門」(2004年)より引用

・page 109  今後の遺伝子診断       現在の遺伝子診断は、遺伝病やガンが対象であり、多くの人々にとつて、遺伝子診断は直接には関係がないことでしょう。しかし、今後は、遺伝子診断は、もっと一般的な病気、すなわち糖尿病や高血圧などの病気に対しても広がり、多くの人々に関係してくる可能性があります。近年、この遺伝子は SNP(スニップ、一塩基多型)といわれる遺伝子の違いによつて説明できる可能性がでてきて、研究が急速に進んでいます。

さて、このようにSNPは病気の発症などに関係していますが、人間の多様性そのものであり、優生学的な考え方は間違いであることも理解しておいてください。例えば、肥満しやすいという遺伝子は現代社会では、糖尿病になりやすい不都合な遺伝子ですが、飢餓の時代には、生存に有利な「健康的」な遺伝子でした。また糖尿病や高血圧は、遺伝的な素因に、不規則な生活習慣などの環境要因が加わって、発症することをふまえると、このような遺伝子は環境要因により、オンにもオフにもなるととらえてもよく、この意味では、遺伝子は運命決定的ではありません。 なお、すべてのひとが、なんらかのこのような異常遺伝子をもっていることも知っておいてください。

・page 113   遺伝子検査とは  大きく分けて3つに分類できる。1つは感染症(外来性遺伝子)の検査。本来人間の身体には存在しない微生物、ウイルスや細菌など、感染症の発症を検出する検査。 2つめは悪性腫瘍(体細胞遺伝子)の遺伝子検査。本来正常な細胞は、ひとつから二つになるときに、遺伝の情報、DNAの情報も複製されて、それぞれがそれぞれの細胞に受け継がれていくわけですが、ガン細胞は無秩序に増殖する細胞です。そこから細胞分裂の過程で正常とは異なった遺伝子の構成ができてきます。それを検出するのが、腫瘍、悪性腫瘍の遺伝子検査ということになる。悪性腫瘍の遺伝子(体細胞遺伝子変異)は、本人の体の遺伝子に限るもので、次世代に遺伝されることはない。

これらの検査は遺伝しない病気なのに、「遺伝子検査」というのは(本当は間違っている)。これは日本語への翻訳の問題から生じている。「遺伝子」はあくまで「Gene」の英語訳で、次世代に遺伝する「遺伝」というのは「heredity」であって、両者は異なるものである。 遺伝子の病気が遺伝するわけではない。ガンは遺伝子の病気ですが、ほとんどのガンは遺伝はしない。

3つめは、遺伝性疾患+多因子疾患(胚細胞系列遺伝子)の検査。受精卵ができた時点ですでに起こっている変化について調べる検査のこと。受精卵ができた時点での異常なので、原則として体のすべての細胞に伝わる。それによつていろいろな遺伝性疾患が引き起こされる。当然次世代の細胞、卵子や精子にもその変化は伝わる。すなわち遺伝するということになる。